連載コラム!

NAUI × ずかんくん

沢山知って、ダイビングを
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はじめまして!このたび『ダイビング指導機関NAUI宣伝隊長』に就任いたしました!海の生き物大好き!イラストを描くのが大好き!ずかんくんです!
広い海にはどんな生き物たちが暮らしているのか?『沢山知って、ダイビングをもっともっと楽しんじゃおう!』をテーマに、毎回登場する生き物を変えながらお話していきます!

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ずかんくん

第15回 ずかんくんコラム 
「オオサンショウウオ」

「オオサンショウウオ」

はじめに

今回のコラムは「特別編」と題して、淡水の世界をご紹介いたします!
普段「ダイビング」と聞くと、海の中でだけ行うイメージがありませんか?
実は川や湖でもダイビングを楽しむことができます。
海のダイビングを「洋」のイメージに例えると、沢や河川、湖などの淡水域で行うダイビングの水中風景は、まさに「和」のイメージに例えることができます。
また「清流」と称される河川でのダイビングでは、海に負けず劣らずの、圧倒的な水中景観の美しさも楽しむことができます。
水中にいる魚たちも上品な色合いのものが多く、その控えめな見た目と、産卵の時期に見せるオスたちの鮮やかな婚姻色のギャップに驚かされます!
そんな河川などの淡水域で、生態系の頂点に立つ生物「オオサンショウウオ」が今回のコラムの主役です。
誰でも一度は名前を聞いたことがある「オオサンショウウオ」という生物はどんなところに生息して、一体どんな生活をしているのでしょうか?
併せて今大きく問題になっている「外来種との遺伝交雑問題」についてもお話ししたいと思います。

水族館でも大人気!?オオサンショウウオってどんないきもの??

オオサンショウウオ最大の特徴はなんといってもその大きさ!
大きい個体では、全長はなんと1mを超えます!
オオサンショウウオはサンショウウオの仲間の中だけでなく、すべての両生類の中で世界最大種を誇ります!
それでいてユーモラスな顔と表情をしている部分や、手袋をしているような前足が愛らしいので、水族館で展示されていると子供たちが水槽の周りに集まり大変大人気です!
また、オオサンショウウオは、約3000万年前からほとんど姿が変化していないので「生きた化石」として学術的にも貴重な生物です。

<オオサンショウウオ説明>
(生息分布)
岐阜県以西の本州と四国、大分県に分布。河川の上流域~中流地域に生息する。
岐阜県は生息地の最東部であるといわれています。
(生息地の特徴)生息地域の特徴は様々で、川幅、流速、水深など必ずしも同じような状況ではありません。様々な環境に生息する適応力を持ちながら、生息地などの破壊が行われることで簡単に数を減らしてしまいます(主に河川改修工事)。
オオサンショウウオはとても長生きで、70年以上生きるといわれており、1952年に国の特別天然記念物に指定されました。
オオサンショウウオはまた、「地域を定めない指定」なので、日本国内のどこにいる個体でも、全て保護の対象になります。
文化庁の許可を受けずに、オオサンショウウオに触れたり、捕まえて飼育したりすると法律で罰せられます。観察する際は十分に気を付けましょう。
(全長)約50~140cm

サクラダイと桜鯛で混乱??
(鼻)・・
成体は肺呼吸をするときに水面から鼻を出す匂いに敏感で、獲物を探すときも使う。
(眼)・・
眼はとても小さい、一見するとどこにあるか分かりづらいので、弱点であるが、眼を敵に見つからないように保護しているのかもしれない。視力がどの程度かは不明。
(口)・・
まるでハンバーガーのような大きな顔と、真一文字に裂けた口を持つ。上下のあごの縁には小さい円錐形(えんすいけい)の歯が200本以上並ぶ。手を出すと噛みつかれる危険がある。
(前足)・・
指は4本。裏側には、粘液が無く、その足でしっかりと踏ん張って岩や斜面を登る。
(後足)・・
指は5本。前後の指の数は両生類に共通する特徴。前足と同じく裏側には粘液は無い。
(皮膚)・・
全体が粘液に覆われているが、足の裏などには粘液が無い。ストレスを感じると白い粘液を出す。
(斑紋)・・
日本の在来種は、茶色のほかに大きめの黒い斑点(斑紋)が不規則に並ぶのが特徴。

会いに行ける!?実際に会いに行けるオオサンショウウオと観察時の注意点

会いに行く方法①スキューバーダイビングを用いた方法で会いに行く

ある程度の水深があり、流れがとても強い河川では、スキューバーダイビング装備でオオサンショウウオに会いに行くことができます。オオサンショウウオは、日中でも、岩場から出てくることがあるため、明るい環境下で全身観察できるチャンスがあり、開拓されたポイントでは遭遇率が高いこともメリットです。岐阜県長良川の本流などでは、リバーダイビングのサービスも行われています。
ずかんくんも実際に潜って会いに行きましたが、見事一発で出逢うことができました!
特にこちらを警戒する様子もなく、全身の特徴をしっかりと観察することができました。

会いに行く方法②スノーケルを用いた方法で探す

京都の鴨川で実際にツアーガイドが行われています。
鴨川を少し登った沢のポイントで、ガイドさんにコツを教わりながら丁寧に岩の隙間を探してみました。
オオサンショウウオは無駄に動かず、水中でじっとしていてうまく周りの風景に溶け込んでいるため、探すのがとても難しかったです。でもスクーバーダイビングの手段と違い時間の制限がないのであきらめなければ、長い時間オオサンショウウオを探すことや、見つけた後の観察なども楽しむことができます!そして何よりも自分の力で見つけたときの感動は何よりも大きいものがありました!またオオサンショウウオは夜行性なので夜間の観察では全身を観察することもできます。
水中写真家の中には、夜間じっと粘りオオサンショウウオがエサを食べる姿や、呼吸のために水面に息継ぎをする姿をカメラに収める方も見られますが、エアーの制限のないスノーケルならではのなせる業で、素晴らしい生態写真を狙うことも夢ではありません。

会いに行く方法③市などが開催する観察会に参加する

岐阜県では市などが秋に県内の高校などと協力して、小中学生向けの親子観察会を行っています。親子で安全に観察したい場合は、こういった機会を逃さないようにWEBなどをチェックしましょう。

日本も河川にオオサンショウウオが2種類いるってほんと?!

オスは、複数のメスを囲いハーレムを作ります。ハーレムのオスが死亡すると、ハーレム内の一番大きなメスがオスへと性転換します。

日本も河川にオオサンショウウオが2種類いるってほんと?!
日本も河川にオオサンショウウオが2種類いるってほんと?!

なぜ中国のオオサンショウウオが日本の川にいるの?

1970年代に食用などとして中国から持ち込まれ野生化してしまいました。

外来種の存在とその危険性本来、その地域に昔から生息していた生き物を「在来種」というのに対し、人の手により本来の生息地からほかの地域へ移動した生きものを「外来種」といいます。
チュウゴクオオサンショウウオと在来のオオサンショウウオは容易に交雑できてしまうため、本来の純粋な血統が激減してしまい、遺伝子汚染問題が進みます。
外来種による本来の生態系への影響は、近年、社会問題としても大きく取り上げられ各地でその対策が始まっています。

「国外外来種」(海外から日本へ持ち込まれた種)
チュウゴクオオサンショウウオ以外にも、河川には様々な要注意外来生物が定着しています!

(クリックで詳細を表示)

「オオクチバス(ブラックバス)」

「オオクチバス(ブラックバス)」

(原産地)北アメリカ、メキシコ北部
1925年に釣りや食用として放流され、現在では日本全国に生息しています。
肉食性で、魚類や甲殻類、昆虫などを捕食するために、在来種に大きな影響を与えています。

「ブルーギル」

「ブルーギル」

(原産地)北アメリカ中東部、メキシコ北部
1960年に食用として持ち込まれました。卵や仔稚魚(しちぎょ)を捕食するため、在来魚に大きな影響を与えています。

「ヌートリア」

「ヌートリア」

(原産地)南アメリカ
1940年代に軍服用の毛皮を採るために養殖されていましたが、終戦後に野外に放逐されました。農作物への被害が出ているほか、ドブガイなどの淡水二枚貝を捕食していることが報告されていて、タナゴ類への影響が心配されています。

「ミシシッピアカミミガメ」

「ミシシッピアカミミガメ」

(原産地)北アメリカ南部、メキシコ北東部
1950年代からペット用として輸入されました。攻撃的になることや、人へのサルモネア菌感染の恐れなどがあります。多くの個体が野外へ捨てられ、全国各地で野生化しています。

外来種説明についての記述
※世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ ガイドブックより抜粋

魅力的な淡水世界!河川で出逢える生物

(クリックで詳細を表示)

「サワガニ」・・・サワガニ科

「サワガニ」

(生息域)渓流、湧水(分布)青森県~九州(甲幅)約3cm
一生を淡水で過ごします。子供は卵の中で変態をすませ、親と同じ姿で生まれます。

「カワムツ」・・・コイ目 コイ科

「カワムツ」

(生息域)河川の上流から中流で見られます(分布)中部地方~九州など
(全長)約15cm
小さな虫などを食べます、背ビレの縁は赤くなりますが、ほかのヒレは赤くなりません。
近縁にヌマムツという別種がいて、古くは同じ種とされていました。

<外見の違い>
カワムツ 胸ビレ、腹ビレの前縁は黄色いことが多い
ヌマムツ 胸ビレ、腹ビレの前縁は赤っぽいことが多い

「ナマズ」・・・ナマズ目ナマズ科

「ナマズ」

(生息域)河川の中流、沼、池、水田、用水路
(分布)北海道南部~九州(全長)約50cm
口に入るものなら何でも食べます。ひげは2対あります。
夜行性で昼は岩場でじっとしています。

「ニホンウナギ」・・・ウナギ目ウナギ科

「ニホンウナギ」

(生息域)河川の中流・下流・湖沼・河口・沿岸(海)
(分布)日本各地(全長)約60cm
ウナギは、海で生まれ、河川にたどり着いて成長し、再び海へ下って産卵する習性があります。
ニホンウナギの場合、日本から遠く離れた太平洋の深海(西マリアナ海嶺の南端近くで生まれる)で産卵しています。
卵からふ化した仔魚は、やがてレプトケファウス幼生へと成長し、海流にたどり着くころにはシラスウナギへと成長し、河川をさかのぼって淡水域に住み着きます。そして5~10年程たつと、産卵のために海へ戻ります。

「カワヨシノボリ」・・・スズキ目ハゼ科

カワヨシノボリ

(生息域)河川の上流・中流
(分布)南日本(全長)約6cm
5月~8月、石の下面に卵を産み、オスは卵を守ります。孵化するとすぐに川底で暮らすようになり、海へは下りません。
春ごろ求愛の時期になるとオスは美しい婚姻色になります、そして梅雨ごろにメスはおなかに卵を持ちます。じっくり観察すると味わい深い魚です。

「アユ」・・・サケ目アユ科

アユ

(生息域)河川の上流・中流・湖・ダム湖
(分布)北海道西部~九州(全長)約15cm
海から川に上ってきた若魚は、石に付いたコケを食べて成長します。
秋、下流の浅瀬で産卵を終えると、わずか1年の短い一生を終えます。
一般的な淡水魚は、食す際に泥臭いと言われてしまいがちですが、アユは「香魚」と呼ばれるほどに特有の良い香りがします。まさに観賞して良し!食べて良し!の愛すべき淡水魚の代表種!
水中観察では胸の大きな斑紋がよく目立ちます。
岩場に生えたコケを食む姿を見て楽しむダイビングが、風流がありお勧めです。

最後に

いつもは海洋生物に焦点を当てて海の世界をテーマにしてきましたが、今回は特別編と題して美しい淡水の世界をご紹介させていただきました。
淡水域は海以上に私たちにとって身近な存在なので、その魅力に気が付くと海のフィールドに負けないぐらいの感動体験が待っています。
中でも川の本流などで行われるリバーダイビングは、海でよく行うドリフトダイビングと同様の魅力とスリルを楽しむことができます。
ただし、河川などは魅力的な反面、水の流れも速く思わぬ事故にも繋がりやすい側面も持ち併せているので、フィールドワークは通常以上に油断しないように行ってください。また小さなお子さんからは決して目を離さないように、安全に淡水生物観察を楽しんでください。
身近な河川でダイビングをすることで、オオサンショウウオのような素晴らしい生き物に出会い、自然環境の素晴らしさを再確認することができます。
水中に落ちているゴミなども気が付くことができるので、ついでに拾っていつまでも綺麗な自然環境を守りましょう。

是非、仲間や親子で日本の生物多様性の豊かさや四季を楽しんでくださいね!

京都の鴨川ではオオサンショウウオ見学ツアーが行われています
都会を流れる河川ですが、渓流部には特別天然記念物のオオサンショウウオやアマゴ、イワナが生息し、そして春になると大阪湾からアユの稚魚が遡上してきます。
そんな素晴らしい都会の河川を目一杯楽しんでみましょう。

コラム協力
田中嗣人  京都ブルーピーター・ガイド
谷内亜衣  京都ブルーピーター・ガイド
一関さやか 水中写真家

イラスト
(参考文献・引用書籍・WEB媒体)
・世界淡水魚園水族館アクア・トトぎふ ガイドブック(江の島マリンコーポレーション)
・(決定版)日本の両生爬虫類(平凡社)
・かがみがはら百科2024 Vol,05 各務ヶ原市のも生息「図解・オオサンショウウオ」
・オオサンショウウオと和良川のいきものたち(郡上市役所和良振興事務所)
・写真検索 釣魚1400種図鑑(KADOKAWA)
・小学館図鑑NEO 魚(小学館)
・小学館の図鑑Z 日本魚類館(小学館)
・ポプラディア大図鑑 魚(ポプラ社)
・学研の図鑑 Live 魚(Gakken)
・講談社の動く図鑑move 魚(講談社)
・山渓ハンディ図鑑13 改訂版 日本の海水魚(山と渓谷社)
・山渓カラー名鑑 日本の海水魚(山と渓谷社)
・世界で一番美しい海のいきもの図鑑(創元社)
・日本産魚類生態大図鑑(東海大学出版会)
・日本産魚類検索 全種の同定 第三版(東海大学出版会)
(2024年5月)