RGBMテーブルのご紹介
NAUI RGBM DIVE TABLE | (下記9点セット) | ||||||||||||||||||||||
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RGBMテーブルは、アメリカ合衆国・ロスアラモス研究所のブルース・ウィエンケ博士の提唱する、Reduced Gradient Bubble Model(縮小勾配気泡モデル)という減圧モデルから導かれた減圧表です。 ウィエンケ博士は、現在この研究所の核兵器テクノロジー/シミュレーション・コンピューティングオフィスプログラムマネージャーです。また、NAUIのインストラクタートレーナー/テクニカルインストラクターで、その他の団体でもインストラクターやインストラクタートレーナーの資格を持っています。 ウィエンケ博士は、かなり前からスーパーコンピュータを使って、減圧アルゴリズムを開発してきています。NAUI・USからも多くの出版物が出されており、高所潜水に関する冊子やNAUI・USのテクニカルダイビングセンターからも減圧理論に関する書籍が出版されています。NAUI・USの協会理事としても活躍していました。 この新しいNAUIのテーブルについて触れる前に、減圧モデルについてごく簡単に述べておく必要があります。 減圧モデルで最も有名なものは、20世紀初頭のホールデンによるものですが、このモデルは、「灌流モデル」と呼ばれるものです。「灌流」とは血液の流れのことで、「血流によって呼吸した窒素が体内に溶け込む」ことを考えているといえるでしょう。この理論は、しかし、血流量が少ない組織では、窒素の体内への溶け混みを説明できないという問題があります。こうしたことから、「拡散モデル」といわれるものが提唱されました。 拡散モデルの代表的なものは、イギリスの王立生理学研究所(RNPL)のヘンプルマン博士による減圧表です。 現在の多くの減圧表は、灌流と拡散の両方を考慮したもので、体内への窒素の蓄積は、血流量が多い組織では主として灌流により、血流量の少ない組織では主として拡散によると考えています。NAUIが使っている減圧表は、U.S.Navy減圧表を若干改訂したもので、灌流・拡散モデルに経験的なデータも加え、より安全を考慮したものということができるでしょう(NAUIナイトロックスコースの減圧表は、U.S.Navyの表そのままです)。 これに対して、相(Phase)モデルと呼ばれるアルゴリズムがあります。ごく簡単に言って、相モデルは、「気泡相」、つまり「アワになった状態」と、「溶解相」つまり「溶けている状態」の両者も考慮するモデルだといえます。 現代の減圧理論では、減圧(つまり浮上)に際して、微小で減圧症にまでいたらないような気泡が必ず形成されることが分かっています。この気泡はしかし、一定の大きさになるまでは、周囲の圧力で押しつぶされて、「気泡相」から「溶解相」に遷移すると考えられます。簡単にいうと、体内では、「アワが溶けたり出たりしている」ことになります。この時に、アワの生長にかかわるのが、「溶解相」と「気泡相」における不活性ガスの「圧力差」すなわち「勾配」です。灌流・拡散モデルでは、減圧の際にこの勾配をできるだけ大きくとることによって不活性ガス(窒素)を速く体外に排出することになります。ホールデン・モデルで、「できるだけ浅いところまで急いで浮上させる」のはこのためです。 しかし、相モデルの考え方からいうと、「気泡を生じさせないためにはできるだけゆっくりした減圧(浮上)」が望ましいことになります。結局、減圧(浮上)はこの両者の拮抗の上に最も最適な方法を考えなければならないわけです。ウィエンケ博士のRGBMは、これまでに提唱された相モデルの勾配よりも小さな勾配を用いていることから、「縮小勾配気泡モデル」と呼ばれています。 ウィエンケ博士の講演によると、「減圧表の引き方は簡単で分かりやすくなければならない」ということです。従来のような、繰り返し潜水のグループを捜し、水面休息時間から残留窒素量を求めて、修正時間から次の潜水の時間や水深を求める方法は、一般のダイバーには複雑である、ということだと思われます。こうしたことと、最近のダイバーの「ダイビング欲求」から、NAUIのRGBMテーブルは、三回のダイビングが可能なもので、水面休息時間も1時間以上とるという単純なものになったと考えられます。 新しいRGBMテーブルは、次第に浅くダイビングする以外に方法がありませんから、「浅いところに潜って後で深いところに潜る」という、「減圧症罹患のリスクが高いと思われる」ダイビングプロフィルは除外されることになります。三回目のダイビングが「浅過ぎる」と思われるかもしれませんが、このダイビングでは潜水時間が長く設定されているという特徴があります。ナイトロックスでのダイビングなら、まあまあの水深まででダイビングが楽しめます。高所潜水に関しては、圧力差(高所は気圧が低い)の関係で、潜水は2回までに制限されます。特殊な環境では、やむを得ないと考えられるでしょう。 |